がんばれコンサルタント！ 第617号：コンサルタントが押さえておくべき「定年」における人間心理

「ゴトウさん、この前、大学時代の友人と久しぶりに集まって飲んでたんですけどね…」── 数年前にコンサルタント起業をされた、親しいお仲間の方と一杯やっていた時にでてきた話題です。

５０歳をちょっと越えたタイミングで一念発起して当社の門を叩かれ、いま食べられるようになって鋭意活躍中…という方です。

なんでも、５０歳を過ぎてから色々余計に考えるようになった…とのことで、特に「自分の人生どうするんだろう？」ということが、もう頭の隅から離れなくなってしまった…というのです。

誰でも自分の人生は自分のことだけに、色々考えて当然でしょう。ですから常に何かしら考えているハズですし、何か気になることが頭の隅から離れない…ということも珍しくないハズです。

問題は、「自分が未来に対して思い描いてきた状態と、実際に置かれている状況とに大きな隔たりを感じる」…ということが起きたとき、一体自分はどうするのか？ ということです。

もちろん、「思い描いていた通りに今現在パーフェクトに実現できている！」という人なら、何も悩みなどないでしょう。しかし、世の多くの方、特に意欲も能力もありながら一歩が踏み出せていない方の場合、夢と現実の乖離に対して、えも言われぬ閉そく感や苦しさを感じていることが多いと思います。

この種の難しさは、「自分の感情を自分が判断する」必要があるため、「いや、自分はそんなことはない！」とか、「そんな夢はとっくにあきらめている！」…といった、自己否定や、こうあるべき論による捻じ曲げが、まさに無意識レベルで行われている確率が非常に高いという点です。

では自分は、本当はどう思っているのか、考えているのか…という話ですが、５０歳を越えてくるような方々にとって、リトマス試験紙的に判断できるものがあります。それが「定年」です。定年を迎える、定年まであと何年…と迫ってきたとき、自分はどう思うのか…

若い人からすれば、「えっ、定年？ 遠すぎてなんのこっちゃ、考えたこともない…」くらいの感覚かもしれませんし、実際４０代までの人で定年を意識している人など、ほとんどいないと思います。

ところが、そんなことを言っていた人たちが、５０を越えて、しかも半ばくらいになると、「定年まで〇年…」と、急速に変化し始める人が増えてきます。

冒頭のお仲間は、旧友と集まって話をしていた際、仕事の話などほとんど出ず、定年後の趣味や年金の話などがもっぱらだったそうで、これまでと大きな変化を感じたというのです。

会社でも、新しい５か年や１０か年プロジェクトの話がでても、「自分たちはその頃もう居ないからな～」と、興味がわかないしやる気が出ない…といった話もでてきてさらに驚いたとのこと。

冒頭の方は「仕事が好きだし、出来れば死ぬまで何かしら人と関わってお金も得ながら生きていきたい…」と公言するタイプです。旧友のこうした話を聞いていて、「自分は定年の無い世界へ思い切って踏み出して本当に良かった」と思ったというのです。

人それぞれに人生がありますから、他人の人生をどうこう言う必要はありません。しかし、考え方の相違ということに目をつぶっていると、自分が不幸になります。

自分が自分の人生に満足していなければ、これは他人がいくら羨んだとしても納得もいきませんし満足もできません。報われなかったと感じてしまうに違いありません。

自分が素の状態でどう思うか。どう考えるか。どこまで行っても自分を誤魔化し切れるものではないのが自分の人生だけに、どこかでしっかり考える必要があります。それを避ければ、ずっと悩みに追いかけられ続けることになります。

コンサルティングの現場においても、そのプロジェクトにどのような人が関わるのか…。この時、どのような考え方が起きるのか…は、リトマス試験紙によって大きく変わってきます。そのことを押さえていなければ、結果が大きく変わってしまうこともある訳です。

あなたは、自分の定年をどう考えていますか？
　他人から決めてもらいますか？ 自分で決めますか？