がんばれコンサルタント! 第295話:コンサルタントが押さえておくべき理屈と野心の関係性
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「ゴトウさん、今になってみれば、あのとき関わっていた社長さんが何故あんなことをしていたかが少し分かる気がします…」── 目下一匹狼のコンサルタントとして活躍するために当社にお越しになられている方のお言葉です。
コンサルティング会社にて数々の実績を上げてこられている方であり、指導実績も非常に多く、現場も熟知されている方。しかし、現場では経営者の「謎に満ちた行動も多かった」というのです。
こうしたことは実際にクライアント企業に入ってみると、否応無く出くわします。「それオカシイでしょう」とか、「社長、マズイですよ」、「なぜそれやるんですか?」…などなど。
どこにもオカシイ部分がない会社…というのもあるかもしれませんが、確率論的に言えば、ほぼすべての会社に「???」という部分があるのが「中小企業」というもの。そしてそれらはほぼ間違いなく社長が思いっきり絡んでいるものばかりです。
特に創業経営者であれば、ゼロからつくってきた本人だけに、まさに「全権」を握っているのですから当然と言えば当然です。冒頭のコンサルタントの方も、しばしばこうした「???」の場面に遭遇してきた…というのです。
中でも「それは社長、ダメですよ」と強く反発して注意したのが「株式投資」とのこと。社内体制が固まってきて業績回復が少し見えてきた矢先に、ほとんど投機的としか言えないようなお金の使い方に見えたため、「強いご忠告」を申し上げたというのです。
これはもちろん正論でしょう。経営者が個人のお金で何をやろうがそれはどうでもいいことですが、会社のお金や法人名義となれば、それは会社としての行動となるため、「危ない投機」に走っているとしたら、関係者としては止めるのも無理もない、いやむしろ止めて当たり前というものです。
しかし一方で、経営的に「正しい」ことと「感情」とは別モノという奥深さがあります。しかも多くの場合、正しいことだけでは決して事業は成長しないという、実に不思議な面もあります。
例えば、「お客様満足」に心酔しきった人の場合、原価率や社員の労力といったものに対しては軽視しがちです。お客様満足自体はとても良いことに違いはありませんが、単細胞的にそこだけ見ていると、「社員の労力は無尽蔵でコストも最大限かけるのが正義」となり、究極の薄利多売を目指すこととなり、お店の改装も社員の給料アップも不可能になってしまいます。
もちろん、逆に「お客なんてどうでもいいから、原価率を下げれるだけ下げろ」という考えであれば、当然誰も買わなくなって閑古鳥になる、というのは言うまでもないことでしょう。
大事なことは「相反する事象に対し、絶妙にバランスをとりながら手を打っていく」という感覚をもっているかどうか…です。正論や理屈だけでは、絶対に越えることはできません。
商品の原価率程度のことであれば、それほど難しくもない話ですが、事業の戦略レベルとなれば、この攻めと守りのバランスは非常に難しくなります。
年商から割り出して、○○パーセントを投資に…と計算からはじき出すことはできても、その会社が現在どういう状況なのか、言ってしまえば創業間もないときなのか、少し落ち着きが出てきたときなのか、力を蓄えておく時期なのか、一気に攻めるべきときなのか、念願だった新事業をいまこそ進めるべきときか…によって、答えは思いっきり変わるのです。
決算書だけ見て「ああだこうだ…」という人たちの最大の弱点はココです。経営者が「なぜ、そのような行動をしようとしたのか?」この感情の部分は、終わった数字をどれだけ長時間見つめてみても、絶対に分からないことだからです。
そもそも、9割以上成功する案件があるとしたら、それこそリターンは数パーセントもあるかどうか…であり、1割しか成功しないような不確定要素が高い案件であればリターンは10倍に跳ね上がるのが経済理論というものです。
創業期とは、立ち止まることすら許されない極めて不安定な状態です。また成長拡大を意図して狙っていかなければならないときもあります。こうしたとき、正解という名の「安全策」をとり続けてしまえば、いったいどうなるか…ということです
冒頭のコンサルタントの方は、最近ある流行の金融商品に手を出し、一人立ち資金として用意していたお金をそこに投じてしまったというのです。結果は「かなり惨敗?」で、お腹が痛い…という笑えない状態とのことですが、一方で冒頭のような言葉を口にされているのです。
正しいか間違っているかで言えば、こうしたことは理屈で考えればスグに分かる話です。しかし、「やりたいこと」や「やらねばならないこと」…が絡み、そこに夢や希望が乗ってくるとき、人の心は揺れ動きます。人の行動の原動力だからです。そしてこの原動力こそが成功確率を高めるのです。
「冒険しなければ飛躍はない」── これは敬愛してやまない前職時代の社長、牟田學氏の言葉ですが、人生やビジネスの本質をついた素晴らしい言葉と言えるでしょう。
正解や安全性だけを考えていれば、確かに間違いはないかもしれません。しかし、そこには大きな成長もなければ飛躍もなく、もっと言えば「人生の面白味」はあるのか…ということです。
理屈や確率論で考えれば、「低いからやらないほうが正解」であっても、自分の心が沸き立ち、勝負を挑もうとする。この心がなければ、そもそも商売を始めることもなければ現在、経営トップとして事業展開をしているはずもないのが、他ならぬ「社長その人」だからです。このことをコンサルタントが腹の底から分かっているのか…ということです。
正しいことと気持ちが分かることとは、余りにも次元が違う話です。本当に致命傷になる場合ならいざ知らず、怪我やヤケド程度の話なら、やってみることの方が得られることは圧倒的に大きくなるものです。
大切なことは、自分自身が「スリ傷」程度でもビビッて避け続けているとしたら、一体、社長のこうした心をどうして理解することができるのか…ということです。
そもそも、個人でも会社でも、5年経っても10年経っても、商売の成長はまるで見られず、働けどたいして暮らしは楽にならず…になっているとしたら、その最大の原因は、「冒険をしない」「勝負をしない」ことが挙げられるのです。
人生や商売は、他人がつくった答案用紙を埋める作業ではありません。
あなたは、自分の夢や願望のために、冒険や挑戦をしていますか?
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