がんばれコンサルタント! 第318話:コンサルタントとして決断できる人、やっぱり決断できない人

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「ゴトウさん、ある所でちょっと本当かな??と思うようなことを聞いてきたのですが、どう思いますか?」── 2年ほど前から当社にお越しになられている、コンサルタント起業をして活動を開始されている方の言葉です。

伺えば、あるセミナーで登壇した人の話を聞いたけれど、どうにも腑に落ちない…とのこと。ざっくり言えば、「顧客はすべて納得しないと、決して買ってくれない…」といった内容とのこと。

まあ、表面だけ聞けば、それはそれで間違いないかも? と思える話なのですが、この方が気になってひっかかったというのは、「とにかく説明資料を徹底的に厚くして…」といった部分とのこと。

なるほど、一面の心理であることは間違いないでしょう。圧倒的な情報を提示すれば、お客様は納得しやすい…という、戦術論でいえば充分、筋がとおる話です。実際、売れていないモノは、ほぼ間違いなく情報不足ですし、まともな資料やパンフレット、ウェブ…などが、極めて貧弱ということは、よくある話です。

しかし、一方で「すべて納得しないと」とか、「徹底的に厚くする」という言葉に代表されるように、人間の本来の心理的なものを横に置いておいて、まるで機械的な作業によって何か物が売れていく…と考えるとしたら、これは極めてオカシイ…と言わざるをえません。

こんなことは、難しく考えるまでもなく、ちょっと考えてみればスグに分かる話です。自分がモノを買うときに、「すべて納得して買った」というものが、一体どれだけあるのか…という話です。むしろ、自分でも不思議なくらいに、なんとなく買ったというほうが断然多い…ということに気づかされるハズです。

理由は単純です。「人は理性的でありたいと思いながらも、現実的には理屈だけでは決して買わない」からです。言葉は悪いですが、理屈ばかり言う現場を知らないマーケッターなどが、どれだけ大声で言おうが、こんなことは街角で何か物を売ってみれば、一発で分かることだからです。

商売してきた人なら皆しっている、「あんた気に入ったから買うよ」…というパターン、これのどこに理屈があるのか…ということです。でもこれが現実なのです。

こういうと、だから人の能力の優劣ではなく、ちゃんとした店舗で、資料もちゃんと揃えて…と言う人がいます。言い分は分かりますし、当社でも似たようなことは申し上げています。

しかし、よく考えてみて欲しいのですが、上手くいかない言い訳に使っていたり、「そのこと自体が目的になっていないか?」という話です。ここを混同すると間違いなく迷路に陥るからです。

良い物は、ちゃんとした店構えで、しっかりした商品説明をすれば、もっと売れるようになる…ということに関しては、多くの人が納得すると思います。これは、基本的に理屈が通っていて、矢印が常に右側を向いていて→ 〇〇ならば●● といった数式的なものになっているからです。当社が云わんとしていることは、まさにここです。

一方で先の話に戻せば、すべて納得すれば人はモノを買う…とか、資料が厚ければモノを買う…ということに関しては、妙なクイズがごとく、ムリがあることが一目瞭然です。百歩譲って、「そういいたい気持ち…」というのならともかく、これを真に受けるとしたら、「商売大丈夫ですか?」ということです。

こうしたことは、ブランドを確立している商売を例に考えてみれば一目瞭然です。しっかりした所で、しっかりした説明、スタッフ、資料、説明…といったものを準備していることが分かります。

しかし、これを表面的にマネただけで、実は中身が空っぽだとしたらどうなるか…は、もう言うまでもないということです。

ついでに言えば、この判断ということに関すれば、「逆もまた真」ということが言えます。つまり購入者側の立場のときです。このとき、自分自身が「虚」とか「空」の状態であればあるほど、不必要なまでの情報収集を続けたりします。言うまでもなく、理由不明で「怖い」からです。

重要なことは、単なる決定レベルの話であれば、これは時間が多少かかろうが、判断が曖昧だろうが、そんなことは、所詮は「選択」の範疇です。要は趣味の領域とたいして変わらない…のですが、こと「決断」のレベルの話であれば、これはまったく変わってくるということです。

言うまでもなく、決断の話は、本人の願望や意思とは無関係で、「突然やってくる」ということが大半です。じっくり待って、積み重ねて…とは、気持ち的には分かる話ですが、現実はもっと非情で、情報が足りていようがいまいが、「ある日突然…」なくらいに、右か左か…を迫られるのが現実、ということです。

これは、本人が気づくかどうかは別問題です。不幸にして天変地異などで迫られるときならある意味誰もが分かるのですが、日常正確において、何か偶然に近い恰好でそうした瞬間に出会うこともあります。

しかし、やはりそれは、本人が気づいているかどうかはともかくとして、極めて重要な「決断のタイミング」だったりします。実はビジネスとは、こうした「普通っぽい機会」の連続だったりします。だから怖いのです。

大切なことは、このときに与えられている情報は、極めて限られている…ということです。あとは、動物的なカンと言えば語弊があるかもしれませんが、本能的に感じる「こっちに行くべき…」という、不思議な感覚を頼りにしない限り、結局は「決断ができずにチャンスを逃す」ということを続けることになります。

成功していく人と、いつまでも同じところをグルグルと廻る人の決定的な差はここです。普段から情報を集める努力はしていても、決断すべき案件やタイミングには、「ここで決めなければならない」と自ら判断し、本能的に鍛えたカンで、右か左かを決定する必要があるのです。

実際、事業で成功した経営者、功を成した人…などには、まず間違いなく、大飛躍のきっかけとなった「勝負の時」があります。しかし、その決断の理由を伺っても、論理的な説明が返ってくる人はまずいません。根拠がないけれど決断してきた証です。

こうしたことは、普段から、「判断をつけるクセ」を訓練しておくことが、ある意味重要です。根拠は重要ですが、最後の瞬間には、「根拠がないけれど、こっち」と選ばらざるを得ない状況ということに、何度も遭遇することになるからです。

ビジネスとは、とどのつまりそういうことの連続ですし、コンサルタントという仕事は、それを指導しなければならない仕事だからです。

あなたは、判断、そして決断の感覚を磨いていますか?

 

著:五藤万晶

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