がんばれコンサルタント! 第91話:自分のコンサルティングにこだわりはあるか?

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第91話:自分のコンサルティングにこだわりはあるか?

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 知人が本を出された後に、いわゆる出版記念セミナーを開催されるというご案内をいただきましたので、せっかくの機会と思い、先週末に神戸まで伺っていました。

 今はフェイスブックなどの便利なツールのお陰で、普段直接お会いしていなくても、日々よく逢って話をしているような感覚になっていることがありますが、この知人ともまさにそのような状態で、ほとんど毎週のようにお会いしているかのような感覚…。

 いつもしっかりとした論旨にて、ご自分の考えを発信されている方で、時には過激な?言葉に周囲をヒヤヒヤさせることも…。しかし、単なる堅物の過激論者かと言えばまったくそんなことはなく、砕けておどけて周囲を笑わせてみたり、実に包容力のある考えや、歴史に基づいた長期的な独自の知見を発信されている不思議な人。

 ちなみにご専門は茶道裏千家で、それをとおしての「接客」をご指導されているのですが、そのような知人が出された本「接客は利休に学べ」の出版記念セミナーを開催するにあたって、「普通のセミナー」を開くとは思っていなかったのですが、ご案内を見たらやはり…?

 勤め人時代は、経営者向けセミナーを企画開催する専門企業ということもあり、企画担当者としてさまざまに嗜好をこらして、斬新なセミナーを開催しようと知恵を絞ったものですが、そんな自分でも、思わず「えっ?そんなセミナー聞いたことない」と思ったのが、この知人が企画したセミナーだったのです。

 その内容は、「お茶会」とセミナーをセットにして朝9時から夕方5時まで実施する…という、正直聞いたことがないユニークな企画。朝から懐石料理をいただいて濃茶をいただいて…、それでいて講義も入っていて…というもの。これは意地でも時間をつくって行かなくては…と、飛んでいったのは、どうしても自分で見て聞いて、体験してみたいと思ったからです。

 理由は単純です。学ぶということに対して、我々は普段活字を多様しがちですが、そこから得られることなど、実は非常に狭いからです。言葉を超えた、空間をとおしてだったり視覚や嗅覚、まさに五感を通じて感覚的に理解することの大切さを知り、実践していなければ、知識やノウハウは単なる薄っぺらい記号的価値しか持たなくなってしまいます。

 このユニークな茶会セミナー、そしてご一緒した方々との上質な時間というものを、私自身、うまく表現する言葉が今は見当たりません。強いて言うなら「感謝・感激」という、実に安っぽい言葉になってしまい、なんとも情けないことになってしまうのですが、逆に言えばこれこそが「実際に行った、触れた、体験した人だけが分かること」とも言えるでしょう。

 ナマの人間に触れて話をしてみる、現地に行ってみる、商品を買ってみる、サービスを体験してみる…、数字や活字、本や資料、レポート…をどれだけ真剣に見ても絶対にわからないことが山ほどあります。コンサルタントは、このことを熟知して、みずからもそれを実行していなければ、単なる分析屋、処理屋になり下がりかねないのです。

 そして興味深いのは、このユニークな企画を実施された知人は、「見たことも聞いたこともない、ユニークな企画で驚かせてやろう!」と奇をてらった考え方をしていたか…ということです。

 人を楽しませることが好きな方ですから、多少は遊び心でそうした部分もあったかもしれませんが、自分の独自性をしっかりと見据えて、それにブレることなく表現を試みた結果、お茶会とセミナーを融合させるという、実にユニークな企画がカタチになったと私は見ています。

 実際、準備に3か月費やされたこのセミナーは、全体のテーマ設定にもとづいた普段はまず入れない神社の奥の間を会場とし、茶器、道具の一つ一つはもちろん、お料理、お声掛け、お品書き、お花、掛け軸、お土産、席づくり、美しい所作、…ありとあらゆる細部が美しく表現されていました。

 そして、私がお茶に浅いために、様々に御配慮いただいたお心遣いの内、恐らくほんの僅かしか理解できていなかったと申し訳なく思っていますが、それでも、「おもてなし」とは何かを後半の講義で少しでも理解できるよう、五感に感じるセミナーとして見事に具現化されていました。

 アップルのスティーブジョブスは、すぐれた道具は「シンプルでなければならない」、「美しくなくてはならない」と、ここに徹底的にこだわり、iPhoneのボタンはたった一つだけになっています。そして美しさへのこだわりとして、本体が黒ならイヤホンジャックの中も黒、本体が白ならイヤホンジャックの中も白に統一するという、細部にまで徹底したこだわりを見せています。

 表面的なことしか見ない人は、形だけマネして茶会とセミナーをくっつけて実施しようとしたりするかもしれません。製品づくりでも、色を統一しておけばいいんでしょ?的に単に色合わせをした製品をつくろうとするかもしれません。しかし、そこには思想もなく、そもそもなぜ、そうするのか…という深い考えが無いために、本物の力が宿ることは決してありません。

 本物の思考、一流のこだわりは、必ず細部にまで「にじみ出てくる」ように現われてきます。あなたのこだわりは何ですか?

 

 

著:五藤万晶

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