がんばれコンサルタント！ 第509話：コンサルタントが知っておくべき、「正しい判断」より重要なこと

「ゴトウさん、今後のビジネス展開でちょっと悩んでいることがありまして…」── 当社の事務所にご相談にお越しになられた、お仲間のコンサルタントの方のお言葉です。

悩んでいる…と言っても、いわゆる「頭抱えて…」といったヤバい状態という話ではありません。これから展開していこうと考えていることにおいて複数の選択肢があって、どれにすべきか迷っているという話です。

この手の話、特にコンサルティングビジネスをされている方の場合なら、お話しを伺えば「選択すべき方向」というのは、ほとんどのケースで実は簡単だったりします。

なにせコンサルティング業専門のアドバイザリー機関ですから…と言えばそれまでですが、これまで数百人以上の方々と直接関わってきていますし、５年１０年経ったらどんな心境変化が起きたり考えが変わるか、またコンサルタント業を何十年もされてきて、どうやって手じまいしていくか…といったことも見てきているからです。

コンサルタント業の場合、普通の商売とちょっと違うといいますか、特徴的な点を挙げるとすれば、それは「人生と商売が一対」という点です。もちろん他のご商売でも、特にオーナー経営者であれば、「人生と商売は密接」ということは間違いないでしょう。

しかし当社が掲げている、これまでに培ってきた知識や経験、ノウハウ…などを活かして自分独自のコンサルティングを展開するというコンサルタント業の場合、「自分が売る商品も、その指導や展開の思想も、すべて自分の半生から生み出されてきたものを基点にしており、さらに一匹オオカミでやっている方が大半ですから経営も本人だけという濃厚さなのです。だからこそ、もはや密接というレベルを超えて「一対」と申し上げている訳です。

このことが意味していること、そして極めて重要なことは、「ビジネスにおける判断は、正しいことがすべてではない」ということです。当たり前ですが、人生は論理的に正しい判断がすべてではないからです。

世の中には、分析を得意する人や、理論や理屈に長けている人がいます。それはそれで、「どちらが正しいか」という答えを求める場合には重宝するに違いありません。

ただし、答えとして正しい事と、その選択に満足したり納得したり、もっと言えば「間違っているかもしれないけれど、こちらを選んでよかったと思うかどうか…」といった人間の感情を伴うことについては、まったく別の話ということです。

簡単な話、小さい子に「あれやっちゃダメ、これもやっちゃダメ、ちゃんと勉強しなければダメ！」と強制し続けて、遊びもさせずに勉強させつづけて子供が良い大学に入ったとして、それは本当にいいんですか？という話です。

満足しているのは「あなたのためだから…」と、強制しつづけた親のほうだけだったりします。しかも「良い大学＝幸せな人生」という、本来イコールではないことを勝手に正解だと押し付けても、世の中偏差値の高い大学に入った人はみんな幸せか？ と問うてみれば、それがイコールではないことは事実として分かることです。

大事なことは、確率や可能性と、人生における正解は別な話ということです。確率や可能性を高めることは選択する際に重要な尺度になることは間違いありません。しかし、それが正解かどうかは、選択した人が判断することだからです。

人生もビジネスも、テストの採点がごとく点数がよければいい…という薄っぺらいものではありません。主体者たる自分が納得したり、満足できるかどうかこそが重要なのであり、そこには「納得や満足＝よい判断」ということはあっても、決まりきった正しい判断など存在しないことが分かります。

そしてもっと大事なことがあります。選択する、決断する…ということの効果です。小さいうちや幼稚な時には、人は与えられたものでも大いに喜びます。しかし、色々なことにチャレンジしたり、自分の人生に主体性を持ち始めると、与えられたものでは満足せず、自分が切り拓いたことや自分がつくったこと、チャレンジして手に入れたこと…に大きな喜びを感じるようになります。

大人になればなるほど、自分が選択、決定、決断したことにこそ納得します。そしてそれをやり遂げたときに、強烈な喜びを感じるようになります。これは、受身の人より主体性が強い人ほど、より一層この傾向が強くなります。

何より重要なことは、この自己判断による「進むべき道の選択」は、強い原動力を生み出す点です。自分が判断し、選択し、その道を歩く…と自分が決めたとき、他ならぬ自分が選択しただけに、そこには強烈なやる気が宿り、たとえ大きな苦難が待ち受けようとも果敢に挑み、普通なら不可能と思われるようなことでも乗り越えていってしまう凄い力を発揮したりします。

与えられたモノや、やらされる時の力と、自分が決断した時に生まれる力とでは、とても比較にならない差になります。同じ一人の人間でも想像を絶するほどのパワーを出せるようになるのが、自己決定がもたらす力なのです。

翻って、我々コンサルタントは、クライアントに対してこの力の存在を知った上で導きを行う必要があります。理論や理屈的に正しいことを「これをやってください」という程度なら、それはオンボロコンピュータから出されるどうでもいいような模範解答レベル…ということです。

大切なことは、確率論的にこの道がいいのは分かっていても、このクライアントの場合はこちらが好きとか合っている…としたら、そこを後押ししたり、つまづきを少しでも減らすアドバイスを…といった先回りをどこまでできるか…。

こうしたことは、自分自身が自己決定した納得の道を歩いていなければ、クライアントに自己決定のパワーを生み出す決断の道を指し示すことは所詮、想像レベルでしかできなくなる…ということです。

あなたは、満足のいく自分独自のコンサルティング商売の道を歩もうとしていますか？
クライアントに満足の道への導きを行おうとしていますか？