がんばれコンサルタント! 第574話:コンサルタントが知っておくべき「もったいない」のビジネス的な観点

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「ゴトウさん、先日クライアントさんのところで、社長さんに思わず、“それは、もったいないですよ…”とお伝えして変更してもらったんですよ…」── 親しいコンサルタント仲間の方が、年に数回定期的にご相談にお越しになられる際に、雑談で出てきたお話です。

なんでも、社内で配置転換を行った際、ある部署で行われることになった施策について、キケンな兆候を感じて社長に進言した…とのこと。

何の施策かと言えば、「かかってくる電話を部署全員で取る」というもの。しかも聞いてみれば電話だけではなくゴミ出しや掃除といったものも交代制でみんなでやる…のだとか。

この手の話がでてきたとき、まず確認すべきことがあります。それは、「時限的なことなのか、それとも恒常的なことなのか」という点です。意味合いがまるで違うといいますか、およそ正反対レベルで変わってくることだからです。

例えば、社長が現場に出て…ということでも、それがキャンペーン的に最前線の仕事をやるという場合、様々な効果や刺激、メディア活用といったことも十分に考えられます。

しかし、それが日常的で「オレがいなければ動かない」とばかりに、社長がねじり鉢巻きで陣頭指揮をしているとしたら、これは大きな問題です。社長がやるべき仕事は他にあるでしょう…と。

経営者には、経営者にしかできない仕事があります。というより、「やらなければならない仕事」があります。事業の未来をつくっていくことであり、方向性を決定し、新しい挑戦をし、会社を成長させていくために手を打つことです。

もしこれをやらずに、現場レベルのことに勤しんでいるとしたら、それは間違いなく「仕事放棄」であり「責任放棄」をしていることになります。単純な話、自分がやるべきことを理解できておらず、「経営がわかっていない」ということです。

怖いのは、日本では小さいころから「みんなで一緒に」という教育を受けて育っていることです。なぜ怖いのか…と言えば、「みんなで一緒にやることは正しいことであり、それを乱すのはよくないこと」…と暗黙知的に思われているからです。

各個人は適材適所で能力を活かすことなく、集団の平均値でしか機能しなくなります。もっと言えば、一番低いレベルでしか動かなくなります。簡単な話、足が速い人がいても、みんなと歩調を合わせなければならなくなるからです。

電話に出ることは商売の基本かもしれませんが、語弊を恐れずに申し上げれば「誰にでもできること」とも言えます。実際、「誰にでもできるから皆で電話にでる」という話がでるのです。

一方で、「この人にしかできない」そして「それは事業にとって非常に重要」というレベルの仕事が存在します。大きな儲けにつながる企画やアイデアの具現化、難しい組織の調整やゼロイチの組み立て、高度な商談…といった類のものは、言うまでもなく誰にもできるというものではありません。

誰にもできることと、誰にもはできないことを一緒くたにして「みんなでやりましょう」とやれば、精鋭の組織も烏合の衆と化することは間違いありません。

「一億稼ぐ能力のある人に、アルバイトの雑用をさせる」という話です。確実に悪平等化による弊害でビジネスは傾いていくことになります。

ただし、この「みんなと一緒にやらないのは悪である」という歪んだ平等意識は、手を変え品を変え現れてきます。理由は簡単です。高度な仕事ができない人が、自分の能力の低さを認めたくないために、悪平等の沼に皆を引きずり込もうとするらです。

誰でもできる仕事で、やたらと手順や作法、マナーのような事をことさら強調して大声を上げる人がいたりしますが、現実的なことで言えば「どうでもいいことにルールをつくって権威を保とうとしている」ことだったりします。能力の低い古参社員がやりたがる常套手段とも言えるでしょう。

実際、その通りやらなかったからと言って、大きな問題が起こることもなく、会社の売上利益は一円も変わることはありません。むしろ無駄な作業や手間を増やしていることが多いとさえ言えます。

重要なことは、「誰にもはできない仕事」、「会社の成長に重要な仕事」に対して、その遂行に可能性が高い人を選び、いかに最大没頭してもらう環境をつくれるか…ということです。

野球で投打に極めて優れて世界一のプレーヤーともいえる大谷選手がいるのに、サッカーやラグビーで登用しようとしたり、球場の掃除やチケット売り場で売り子をさせるとしたら、これは「余りにももったいない」という話です。

そしてもう一点極めて重要なことがあります。それは、そうした能力や可能性が本当にある人であれば、みずから気づき、自分を活かせる環境に進んで動いていく必要がある、ということです。そもそも環境や采配を他者に委ねている限り、己の可能性を最大限に発揮することは不可能だからです。

将来性がないところでどれだけ努力しても無駄ですし、他者がつくった与えられた環境で制約が無いということはありえません。だからこそ、自分の可能性を信じたい人、秘めた想いがある人であればあるほど、自分が本当に活躍できる場を考え、行動していく必要があります。宝の持ち腐れにならないために…。

あなたは、自分が大いに活躍できる「場」を選択していますか? その判断、行動をとっていますか?

著:五藤万晶

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