がんばれコンサルタント! 第488話:余計なものに手をだしていないかどうかの判断軸

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「ゴトウさん、先日ある案件を打診されたんですが、それを受けていいものか悩んでいまして…」── コンサルタント仲間になってまだ日が浅い方からのご相談のお言葉です。

なんでも、ある施設が空いているので、そこを割安で貸し出すのを手伝ってもらえないか…という話とのことで、ついては自分でも一部分を借りて使って…といった話が進んでいるのだとか。

いま東京でも、ビルテナントに空きが目立ってきています。一階の元々飲食店が入っていただろうと思われる場所のみならず、典型的なオフィスビルの3階や4階などでも結構空きがあるのは、夕方から夜にかけて街を歩くと、電気がつかずにガランとした暗い室内が見えて一目で分かるため、その空き状況の多さには驚きを禁じ得ないほどです。

空きが多くなれば当然、家賃相場もそれなりに下がってきているのでしょう。詳しくは調べていませんが、世の自然の流れから当然な訳で、前から条件のいいテナントを物色していた人たちからすれば、これは潜在一隅のチャンスと言えるかもしれません。

実際、大手の飲食チェーンの中には、駅前の好立地物件の出物に対して、積極的な出店を進めているところもあります。普段ならまず空かない場所だったり、空いても高すぎて手が出ない…という所が出てきたりするからです。

こうした前々から準備をしていて、世の大きなうねりのチャンスを見逃さずに、果敢にチャレンジしていくのは、本当に素晴らしいことでしょう。事前の準備のみならず、それだけのお金もちゃんと用意できていなければ、「分かっていても動けない」ということになるからです。

一方で、同じ「動いている」ように見えても、実は「動かされている」場合があります。他人に都合よく利用されている…と言えば言葉は悪いですが、実際、半ば勘違いで踊らされている…というケースは結構多いので、本当に注意が必要です。

冒頭のお仲間のケースも、直感的に「アブナイ」と感じた案件の一つで、「割安だから」という言葉がまさにそれを象徴していると言えるでしょう。理由は単純です。「元々、それを何年も前から予定していましたか?」という話です。

我々コンサルタント業の場合、コンサルティング指導が根幹であり、これをきちっと回すことがビジネスにとって最重要事となります。実にシンプルな話です。

このビジネスを回すときに、より「やりやすい」とか「便利」とか、「自分の夢だった…」といったことを加味しながら、例えば事務所を持つとか、スタッフを雇うとか、様々なことを業容拡大の中で考えていくことになります。

売上利益があがっているなら、それをどう使うかは、ある意味経営者である本人の勝手ですから、その配分も人によって大きく変わってきて当然と言えるでしょう。

問題は、自分のビジネス上それが必要とか欲しいと「前から考えていたのか」「本当に必要との判断をしたのか」という点です。

当たり前のことを言っています。しかし、降ってわいたような話がポロンとでてきたとき、なぜか冷静さを欠いて、人は「割安だから」で判断することが、本当にあったりするから怖いのです。

なぜそうなってしまうのか…。その根源は、自分のビジネスが確立できていなかったり、そもそもビジネスと仕事の区別すらついていなかったりするからです。

自分のビジネスが分かっていなければ、判断軸は残念なほどに「お金」か「やりたいこと」に集約されていきます。仕事だから…の言葉も、よくよく突っ込んで聞いてみると、単にお金を得るための、「ほとんどバイトと変わらない程度の考え」だったりします。

このことが常態化してくると、「仕事だから」の方便を、ほぼ見境なくつかうようになり、何のご商売をされているんですか?の質問にまともに答えることすらできなくなってきたりします。自分でもよく分かっていないからです。

さらにややこしいのは、これを「多角化」だと強弁する人もでてきます。まあ、ご本人がそう言われるのならそれでも構いませんが、それが本当の多角化かどうかは、たった一つの質問で分かることです。

御社の柱の事業は何ですか? ── と。当然、それが極めて強い柱であり、その収益でビジネスは順調に回せている…なんてことは大前提と言えます。大元の柱があった上で、他の事業を展開していくから「多角化」なのですから…。

もし、どれもまともな柱にもなっておらず、ましてその一つの柱でやっていけるだけの収益をあげることができていないとしたら…。語弊恐れずに申し上げれば、それは単なる「バイトの掛け持ち」ということです。

自分のビジネスは何か。自分がやるべきことは何か…。これを厳かに定める。そのことで内側から力がみなぎってくるようになります。小さな出来事に左右されない、大きな方向性を見出せるようになるからです。

あなたは、自分のビジネスを定めていますか?
コンサルティングの柱を定めていますか?

著:五藤万晶

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