がんばれコンサルタント！ 第506話：なぜコンサルタントをやるのか、存在理由の重要性

「ゴトウさん、すみません私ね、あの話をすると涙がでてきてしまうんですよ…」── 先日、コンサルタント仲間とご一緒して一杯していたときに、思わずこぼされた一言です。

あの話…とは、ご登壇の際に、ご自身のお仕事内容や経緯をお話しされていた中で、ある事柄に強い想い入れがあり、思わずちょっとお話しを中断されたことを気にされての言葉。

その昔、まだお勤め時分の若かりし頃とのことですが、自分の力不足や配慮不足などにより、ある社長さんのご家庭での切ない情景が今も脳裏を離れない…とのこと。

あんな悲しい想いを二度とさせないために…と力をつけて独立をして、コンサルタントになってそうした人たちを助けてあげたい…。そう想ってコンサルタントになられたとのことですが、その経緯の話をするたびに、思い返されて涙が止まらなくなる…。

ずいぶん涙もろい人ですね…と一言で片づける人もいるかもしれませんが、正直なところ、特定の話をすると思わず涙がでてしまう…という方は、周囲に結構いらっしゃいます。決して珍しくはありません。

むしろ、これまでにたくさんの創業経営者の方々とお話をしてきましたが、未来に向けた血気盛んな話のときとは打って変わって、過去の話になって琴線に触れる特定の話になると、水道の蛇口なみ？ のわずか数秒で涙が止まらなくなる…といった方をたくさん知っています。

経営やビジネスを、単なる金儲けとか効率とかで考える人からすれば、「は？？」みたいに思うかもしれませんし、それほどドライでなくても、そもそも会社や仕事にそれほどの思い入れがなければ、やはり「意味わからない」となっても不思議ではありません。

人は誰で、感情的な思いれがないことに対して、話をしているだけで涙が止まらなくなる…などということは、まずありません。俳優でも感情移入があってこその名演技ができる訳です。

辛かったり悲しかったり、さみしかったり切なかったり、あんな思いを二度としたくない…という強烈な想いがあるから、そこにスイッチがはいってしまう話をするだけで涙が止まらなくなるのです。

それがいいか悪いか…を論議するつもりはありません。しかし、涙がでる理由も分からないような人が、人前で正論かざして「これが大事！」と叫んだところで、そんな薄っぺらい正論など、強烈な感情を抱きながらがんばっている人たちからすれば、それこそ単なるパフォーマンスにしか見えない…というのが本当のところです。

いま戦争が起きていますが、一部の評論家が「命より大事なものはない」などと解説していたりします。紛れもない正論でしょう。しかし、「命を懸けても守りたい人」「命を懸けてもなんとかしたい人」からすれば、それこそ「うるさい、すっこんでろ！」という話に違いありません。

平和な時でも、人生には命がけでしか実現しないことが存在しますし、実現できなかったり守れなくて死んでいくことなど、その人たちからすれば、それこそ死んでも死にきれない…ほどつらいことだったりします。薄っぺらい正論だけで生きている人には一生分からない話です。

むしろ、強烈な想いもなく、ただ単に理屈や数字、効率、薄っぺらい正義…などで動く人たちこそ、自分の軸を持たずに風見鶏で生き続けることに、いつか必ず苛まれるときがきます。周囲は必ずみていますし、大事な局面でそれがバレて信用を失っていく様は、哀れな人として歴史に刻まれていくことになります。

われわれコンサルタント業を考えるとき、自分が存在する理由は一体何なのか？ そのルーツはとても大切です。笑われたっていい、涙がとまらなくなってもいい、悲しくなってもいい…。そういう人にこそ活躍してほしいと心から願っています。

その強い想いが自分の存在を後押ししてくれる力になります。辛くて倒れそうになったとき、ギリギリで踏ん張らなくてはならないとき、もう一歩の力を与えてくれます。他人がどんなに何を言おうが、人生をかける価値はその人にしか分からないのです。

そして、その強い想いの源泉は、自分と関係する他の大切な方に対してこそ、より強力に発揮されます。どれだけ頭が良くて理屈に優れていても、結局は自分のことしか考えられない人は、肝心な時に役立たずになってしまうのは踏ん張る理由すら見いだせないからです。

命懸けの人は強いです。他の人の魂を揺さぶり共鳴を起こすからです。
今のままで悔いはないですか？ あなたの残りの人生をかけるものは何ですか？