がんばれコンサルタント! 第510話:コンサルタントが押さえておくべき「分かっている」がもたらす危険性

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「ゴトウさん、先日あるクライアントさんのところに行ってたんですが、これからやることを分かってもらうのにかなり苦労しましたよ…」── ちょっと打ち合わせに当社の事務所にお越しになられた親しいコンサルタント仲間の方のお言葉です。

なんでも、これから進めてもらうコンサルティングの施策を何度か説明されたそうですが、毎度毎度、これまでと同じことを繰り返して一向に施策が進まずに困った…というお話しです。

これまでと同じことをやっていてはコトが進むはずもない…とは、誰が考えても分かりそうなものですが、そのクライアントさんは決まって同じ返事をされるそうで、いよいよ途中から考え方を変えてもらったというのです。

同じ返事…とは、ズバリ「わかっている」のフレーズ──。そう、この言葉がもたらす危険性は想像以上なだけに本当に要注意なのです。

この言葉の怖いのは、「分かっていますか?」と訊かれるとき、「分かっていない」と答えるのに抵抗がでる点です。誰でも自分がバカや無能だと思われたくないため、この傾向は大人になればなるほど、社会的に地位が上がれば上がるほど、より意固地になるように「分かっている」と答えがちになります。

当然ですが、本当に分かっているのなら問題はない…ということで、実際には「分かっていない」から進まない…のです。しかし、この手の話がややこしいのは、「分かっているけど…」とか「分かっているけどできない…」などの言葉が普通に使われたりする点です。

そう、「わかっていることと、やれることは別」ということです。もちろん、このこと自体は実にまっとうなことを言っています。理屈的にも、「理解する」ことと「実際に実行する」ことでは違うことですし、段階を分けて考えるとしたら自然なことと言えるでしょう。

ただし、「主体者自身が、目的遂行のために行うこと」であるならば、これは話が別となります。目的遂行のためにやるのですから、それができないとしたら「わかっていない」と考えるほうが自然だからです。

要は、学問的に考えたり、何か作業として行うとしたら、それは理解と実行を分けて…というのは当然のことかもしれませんが、目的遂行を第一に考えるとしたら、「できていないんだったら、わかっていない」と考えるほうが当然という話だからです。

経営やビジネスにおいて、「お客様のことを考えて…」などとよく言われるフレーズがありますが、まっとうな経営者ほど、「まだまだ分かっていない…」と自らを省みられます。そして対照的に、「はいはい、お客様第一ですよね? わかっていますよ」などと軽々しく返事をする人に限って「本当に意味わかってます?」という行動をとったりします。

この手の人たちに共通するのは、「理解」していればいい…とか、「知っている」ことで、そこで勝手に完了している点です。実行すること自体は別の話なので、仮に実行ができていなくても「それは別の話」だと、これまた勝手に切り分けるからです。このほうが都合がいいからですが、体のいい言い訳にすぎないのが本当のところです。

重要なことは、主体者と従事者の違いです。言われてそれに対して作業する人たちは、実行や結果など、自分たちは興味がなく、むしろ理解したのか、知っているのか…ということに重点を置きます。さながらテストのように問われるからです。このため、訊けば立派な答えが返ってきます。知っていると…。

仮に結果を問われるときがあっても、理論としてあっているし、知っていることなのだが、それは結果とは別なのだから、「自分は悪くない」と切り分けによる自己弁護を行います。責任を取らずに済むからです。

しかし、ビジネスの主体者は、むしろ理論理屈より「実行」や「目的遂行」を第一とします。そのために日々の活動をしているからです。このため、目的遂行ができなかった場合、何かが足りていない…とか、わかっていない…と考えるほうがむしろ自然と言えます。

経営者といっても色々な人がいます。創業者で主体的に事業を伸ばしてきた人、与えられたポジションで「社長」になった人、後継的に経営者になった人…、さまざまです。同様に、コンサルタントにもさまざまあります。

同じ言葉を使っていても、意味が同じとは限りません。ですから通じないことが起きた時、「本質論」として違う言葉を使ってでも、ビジネスを動かすことを考えていかなければなりません。我々は「知っていてもしょうがなく、実行されて動く」ことにこそ、意味がある立場だからです。

あなたはビジネスの主体者として、実行や動くことに重きを置いていますか?

著:五藤万晶

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