がんばれコンサルタント! 第588話:「起業するなら早い方がいい」というのは本当か?

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「ゴトウさん、商売を始めるのには色々な知識や経験って大事ですよね? 」── 昨年コンサルタント起業をされた、まだお若い仲間の方と一杯やっていたときに出てきた言葉です。

よく、「起業するなら早いほうがいい」といった言葉を耳にされたことがある人は多いと思います。一方で、「起業には、しっかりした準備が必要だ」といった言葉も耳にします。ある意味正反対ともとれるフレーズで、余計に悩んだりする人も多いかもしれません。

実際のところどうなのか? と言われても何か決まりがある訳ではありませんので、正解を断じることは不可能でしょう。ただし、統計やアンケート集計による数字というのは存在します。いわゆる実際に起業した人たちの実態というものです。

少し前のものですが、日本政策金融公庫でだされているレポートがあり、それによれば起業した人の年代別の黒字率や満足度なるものが、数字による割合で出ており、実に興味深い結果が記されているのです。

端的に示せば、「若く起業した人ほど満足度が高く、実際に思っていた数字以上の成果を上げている人も高齢起業者より多い」ということで、これを見れば「起業するなら早いほうがいい」というのは、まさに数字が証明していることになるでしょう。

ただし、いくつかの点を考慮する必要があります。例えば業種や業態によって経営者の平均年齢は違ってきますし、「いくら売上利益があれば満足するか…」も年齢によって違ってきます。極端な話、若い20代の人にとっては月50万円あれば喜ぶ人も多いかもしれませんが、家族がいてそれなりに働いてきた50代60代からすれば月50万円では満足しなかったりします。

ちなみに、ここで言う起業とは、あらゆる商売を指していますので、当然ながらコンサルタント業に限った話ではありません。ITはじめ飲食、製造、卸、物流、物販、サービス…など、様々な商売が対象です。

つまり、起業に際して業種業態ごとの参入のしやすさ、知識や経験をどれだけ有するのか…といった点については、単に全体の平均値を見るだけでは見誤るということです。

例えば、不動産業の経営者の平均年齢が高いことは、統計的にも現れています。色々な理由が考えられますが、根本的に知識や経験、お金…などが揃ってこないと難しいという面も大きいでしょう。似たようなことは、宝飾業や絵画商などにも言えます。

大きなお金が絡み、目利きも重要となってくる。様々な知識や経験、ノウハウに勘も重要となってくる商売で、お客様も年齢を重ねてきたお金持ちということが多く、接していく力も必要になるだけに、若くて勢いがあっても簡単には上手くいかない…という領域と言えるでしょう。

これらの条件を考えるとき、コンサルタント業も非常に似ていることが分かります。ある意味、ここが研修やトレーナー、講演講師…といった社員向けの仕事と、根本的に違うところとも言えます。

経営者対象でコンサルティング指導を行うとなれば、当然ながら、ある程度年齢が高い人が対象となりますし、大きなお金が動くだけに様々な経験も必要となってくるでしょう。

こうした点を鑑みる時、コンサルタント商売においても、やはり基本的には歳を取るより若い方が有利ということは変わらないでしょう。ただしこれは、自分自身の中における若いほうが有利という意味です。ご自分の現在と、5年後や10年後に何かを始めることを想像して比べてみれば、すぐにわかるはずです。

これが何を意味するかと言えば、5年後に何かを始めるほうが有利…ということが理屈として合うには、若さを失うという天秤にかけても、「起業に必要な最低限の知識や経験、ノウハウが現在は足りておらず、それを獲得するために時間が必要」という時ということが分かります。

その点においてクリアーできていれば、これは早いに越したことがないと言える訳ですが、ではどれくらいの年齢でそれをクリアーしていれば? と訊かれたならどうなるか。

答えは簡単です。それは、「人に教えられる小さくてもキラリと光る何かがあるか」そして、「自らの意思で、“自分の知識や経験を活かして商売したい”と思うかどうか」に尽きるでしょう。

小さくてもキラリと光るもの…については、自分自身では僅かにしか気がつかないことが多く、他者から言われたり、磨きこんだりして初めて自分でも信じ始める…ということは、当社では年中、目にしていることだったりしますが、実はそれだけ自分のことはあまり見えていなかったりします。

年齢が高くても、自分の知識や経験を活かしたと思わない人や、他にやることがないから…という人であれば、コンサルタント商売は難しいでしょう。逆にまだまだ若い人であっても、すでに様々な経験を積んで知識やノウハウがあって自分を信じられる人なら、大いにチャンスはあると言えます。

先の起業に関する資料には、「起業理由」の項目があります。そこには「自分の重ねてきた知識や経験をいかしたい」というのが、すべての年代で理由の第1位になっています。

だれでも、これまでやってきたことを活かしたいのです。それを何か違うことを学んで覚えたり、資格やライセンスが必要になる方向になるのは、実にもったいないと言えます。コンサルタント商売は、まさに自分のやってきたことを最大限に活かせる商売です。

そして資料にはもう一つ興味深いことが記されていました。高齢起業者になって極端に増えるのが「自らの意思ではなく、他の理由で起業」というものです。いわゆる定年退職を機に始めた…というものです。

他の年代層と明らかに違うのはここです。「自らの意思とタイミング」ではなく、他の理由による起業で、後の満足度も低くなっている人が多いのは、単なる統計的偶然でしょうか。

何事も自分の決断で始め、終わるときも自分の決断で終えるかどうかは、プロスポーツ選手をみても、経営者を見ても、その後の納得や満足に大きな違いがでることは言うまでもないでしょう。

あなたの機が熟したとき、スタートするタイミングと言えるでしょう。決してそのことは忘れないでください。

著:五藤万晶

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