がんばれコンサルタント！ 第597話：コンサルタントが知っておくべき、握っている手のひらを開く必要性

「ゴトウさん、これまでやってきたことを活かして独立したいと考えているんですが、何ができるのかどうにも分からなくて…」── 先般、当社のオンデマンドセミナーをご利用いただいた方で、その後のZoom相談でお話していた時に出てきたお言葉です。

なんでも、何年も前からサラリーマンを辞めて独立することをお考えになっていたとのことで、そのために資格はじめ、様々な経験を積み重ねてきた…とのこと。

問題は、そうした蓄積の中から、強みとなるモノを活かして独立して…と考えるけれど、さて一体どれを活かせば上手くいくのか、考えれば考えるほど悩んでしまう…というのです。

なるほど、これはある意味よくあるパターンの一つと言えるでしょう。自分の強みを活かして独立することを考えれば、それを必死に考え、探し、尖らしたいと誰もが考えるに違いないからです。

これは、まさにそのとおりと言えるでしょう。しかし一方で、もう一つ重要なことがあります。このコラムでも何度もお伝えしてきましたが、部分部分だけでは商売にならない…という面があり、そこをどう組み入れて商売として成立させるか…という問題があります。

経理だけではビジネスにならない、物流だけでは商売にならない、営業だけでは商売にならない…という話です。ただしこれは、「仮に足りない部分があっても、それらがビジネスとして機能するようにすればいい」ということを意味しています。

独立して一人で始めようとする時、なぜか固定観念的に「なんでも自分でやらなくてはならない」と思い込む人が非常に多いのですが、何も一人で全部のことをやる必要など、一切ありません。ここは大きな勘違いと言えます。

むしろ不得意なことまで「やらなくては…」と必死に勉強してもがいたり、好きでもないヘタくそなことに時間をかけてやっていたら、それこそ商売が立ち上がっていくための最も大切な時間とエネルギーが損なわれていってしまいます。

このあたりは、ビジネスを上手に立ち上げ、回してくいくための極めて重要な部分であり、関わった多くの方々にお伝えしていっていますが、想像しているより難易度が高く、そして想像以上に重要なニュアンスでありノウハウだったりします。もがいてももがいても、ビジネスが成長しかない人たちに、見事にあてはまってしまう部分だからです。

重要なことは、これらのことを大前提とした上で、「自分がやってきたことを核にしながらも、ビジネスとして成立するもっと大きなモノをジャンプして掴みにいく」ということです。

要は、「このパーツは大事だからと、大切にパーツを握りしめていれば、もっと大きなチャンスや可能性のあるものがあっても、それを掴むことはできない」という話です。手のひらに握っている小さなものを一旦手放さないかぎり、大きなモノを掴むことはできないという単純な話です。

そう、分かり切っていることだと思います。しかし、いざその場面になると、いま握っているものを一旦手放すことに、強烈な恐怖感を感じたり、何かもったいなさを感じたりすることがあったりします。

実際には、すべてを手放すという訳ではなく、その小さなものを核としたもっと大きなものを握るために一度手のひらをあける…ということなのですが、気分的には「命綱から一度手を放す」くらいの心境になるため、そこの段階でひるんでしまう人もいます。

一つ言えることは、走ることでも、飛び石を渡るのでも、幅の広いうんてい…でも、常に脚や手が何かに接地していないと怖い…となれば、実に狭い世界でしか生きられない…ということです。

速く遠くまで走りたければ、地面を蹴って瞬間瞬間、宙に浮くがごとく駆けていく必要がありますし、飛び石を渡っていくには、その連続でポンポンと飛んでいくしかありません。安全に安全に…と、必ずどちらかの脚を石につけて…とやっていれば、自分の歩幅以上の飛び石を渡ることもできなければ、速度を上げて駆けることもできないのです。

不思議なもので、自分が思い描く未来に到達するためには、現在の歩幅だけでは絶対に越えられない断絶のような部分が必ずと言っていいほどあります。

もっと報われたい、大きな仕事で活躍したい、昔からの夢を叶えたい…と考えるとき、重要なことは「現在持っている歩幅では渡れない未来がある」と正しく認識し、それを飛び超えるための知恵と力をつけるしかない…ということです。

あなたは、自分の夢を叶えるために、手のひらをあけて、大きなジャンプでつかもうとしていますか？